「この資格、受験料は会社が出してくれるのだろうか」。資格の勉強を始める前に、そう考えたことはありませんか。たとえば AWS Certified CloudOps Engineer – Associate の受験料は1回150 USDです。会社の制度を使えるかどうかで、負担は大きく変わります。
結論:資格取得支援制度は、受験料や講座代を会社が負担する制度です。使う前に「対象の資格」「支払いのタイミング」「辞めたときの返還ルール」の3点を確かめてください。
この記事では、制度の種類と導入状況を厚生労働省の調査で確かめ、税金と返還ルールは国税庁の通達と労働基準法の条文で整理します。
筆者は ORACLE MASTER Gold と Java Gold を保有する現役エンジニアです。調査・通達・法令は、各省庁の公式サイトと e-Gov 法令検索で確かめました(2026年10月13日に確認)。
- 資格取得支援制度の種類と、資格手当との違い
- 厚生労働省の調査で分かる、会社の支援の実態
- 会社負担分の税金と、辞めたときの返還ルールの確認点
※本記事は働き方・制度に関する一般的な情報提供です。制度の有無や内容は会社によって大きく異なります。税金や労働契約に関する個別の判断は、勤務先の規程を確認のうえ、必要に応じて税務署・労働基準監督署・専門家にご相談ください。
結論:資格取得支援制度で確かめる3つのこと
制度を使う前に、次の3つを就業規則や社内規程で確かめてください。ここを確かめずに申し込むと、あとで自己負担になったり、退職時に返還を求められたりすることがあります。
| 確かめること | 具体的に見る点 |
|---|---|
| 対象の資格 | 会社が対象にしている資格の一覧はあるか。業務との関係をどう判断するか |
| 支払いのタイミング | 受験前に会社が払うか、合格後に精算するか。不合格や再受験のときはどうなるか |
| 返還ルール | 退職したときに返還を求める取り決めはあるか。期間と金額はどう決まっているか |
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分からない点は、申し込む前に人事や上司に聞いておきましょう。聞いた内容はメールなど記録に残る形でもらっておくと安心です。
資格取得支援制度とは:手当とは別の制度
資格取得支援制度は、資格を取るまでにかかる費用や時間を会社が支える制度です。会社によって呼び名も中身も違いますが、主に次のような形があります。
| 形 | 内容 | 支払われる時期 |
|---|---|---|
| 受験料の補助 | 受験料の全額または一部を会社が負担 | 受験前、または合格後に精算 |
| 講座・教材費の補助 | 講座の受講料や書籍代を会社が負担 | 購入時、または修了後に精算 |
| 合格祝い金(一時金) | 合格したときに一度だけ支払う | 合格後 |
| 資格手当 | 資格を持っている間、毎月の給与に上乗せ | 取得後、毎月 |
| 勉強時間の配慮 | 教育訓練休暇などで勉強の時間を確保 | 制度による |
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このうち資格手当は「取ったあと」の制度で、受験料の補助などとは別に設けられていることが多いです。資格手当と年収への影響は、資格手当・年収は資格取得でどう変わるかで詳しく整理しています。
どれくらいの会社が支援している?厚生労働省の調査
厚生労働省の「令和7年度能力開発基本調査」は、常用労働者30人以上の企業・事業所と、そこで働く人を対象にした調査です。会社が社員の自己啓発(資格の勉強などを含む)をどう支えているかが分かります。
| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 正社員の自己啓発に対する支援を行っている事業所 | 81.4%(正社員を雇用する事業所のうち) |
| 支援の内容:受講料などの金銭的援助 | 74.7%(正社員・複数回答) |
| 支援の内容:自己啓発を通して取得した資格等に対する報酬 | 40.5%(正社員・複数回答) |
| 自己啓発支援に支出した費用の労働者一人当たり平均額 | 0.4万円(令和6年度実績) |
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8割ほどの事業所が何らかの支援をしていて、その中身は受講料などのお金の援助がいちばん多い、という結果です。一方で、自己啓発支援に使った費用は1人あたり平均で年0.4万円です。この額は支援を使っていない人も含めて全労働者で均した平均で、利用した人1人あたりの額ではありません。支援の手厚さは会社ごとに大きく違うので、自分の会社の規程を確かめることが大切です。
※この章の数値は 厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」 より
会社が負担した資格の費用に税金はかかる?
職務に直接必要な資格を取らせるための研修会・講習会等の費用を会社が負担した場合、適正な額であれば課税しなくてよいとされています。受験料がこれに当たるかは通達に明記がないため、会社の経理担当に確認してください。
国税庁の所得税基本通達36−29の2は、次のように定めています。
使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。
ポイントは「業務遂行上の必要に基づき」「職務に直接必要な」「適正なものに限り」の3つです。担当業務と関係の薄い資格の費用や、通常より高い額を支給された場合は、扱いが変わることがあります。気になるときは、会社の経理担当に確認してください。
※この章の内容は 国税庁「所得税基本通達36−29の2」 より
辞めたら返す?返還ルールの確認ポイント
資格取得支援制度には、「取得後◯年以内に退職したら費用を返還する」といった取り決めが付いていることがあります。
労働基準法第16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。返還の取り決めがこの規定との関係で問題になるかどうかは、費用の性質や取り決めの内容など、個別の事情で判断されます。
だからこそ、申し込む前に取り決めの中身を確かめておくことが大切です。
- 返還の取り決めは、就業規則・社内規程・誓約書のどこに書かれているか
- 返還を求められる期間(取得後何年以内か)と、金額の決め方
- 会社が業務として受験を指示した場合も、同じ扱いになるか
取り決めに納得できない、または退職時に返還を求められて判断に迷うときは、労働基準監督署などの公的な窓口に相談してください。
※この章の条文は 労働基準法(e-Gov法令検索) より
制度を上手に使う手順
制度がある会社なら、次の順番で進めると手続きの漏れを防げます。
- 規程を読む:就業規則や社内ポータルで、制度の名前と対象を確かめる
- 対象の資格か確かめる:一覧にない資格なら、業務との関係を説明できるか考える
- 申請のタイミングを確かめる:受験前の申請が必要か、合格後の精算か
- 上司に相談する:業務にどう役立つかを、担当している仕事と結びつけて伝える
- 合格後の手続きをする:合格証のコピーの提出、資格手当の申請などを忘れずに
勉強時間の作り方は、働きながら資格勉強を両立する方法にまとめています。
会社に制度がない場合の選択肢
会社に制度がない、または対象外の資格を取りたい場合も、選択肢はあります。
業務に必要な理由を説明して相談する
制度がなくても、業務に直接必要な資格なら、個別に費用を負担してもらえることがあります。どの業務のどんな場面で使う知識なのかを具体的に説明できると、相談しやすくなります。
国の教育訓練給付金を調べる
厚生労働省の教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定した講座を受講・修了したときに、費用の一部が支給される制度です。
| 種類 | 支給の内容(令和6年10月以降に開講する講座の場合) |
|---|---|
| 一般教育訓練 | 教育訓練経費の20%(上限10万円) |
| 特定一般教育訓練 | 教育訓練経費の40%(上限20万円)。資格取得などの条件を満たすと50%(上限25万円) |
| 専門実践教育訓練 | 教育訓練経費の50%(年間上限40万円)。条件を満たすと70%・80%まで |
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対象になるのは指定を受けた講座だけで、受給には一定の要件があります。受けたい講座が対象かどうかは厚生労働省の講座検索システムで、受給の要件はお住まいを管轄するハローワークで確かめてください。
※この章の数値は 厚生労働省「教育訓練給付金」 より
自費で受けるなら、問題演習で準備の無駄を減らす
自費で受験するなら、1回で受かるための準備がいっそう大切になります。過去の出題傾向に沿った問題演習で、知識の抜けを早めに見つけておきましょう。

上の画面は、筆者が運営するエンジニア資格合格ラボの問題演習です。Java・ORACLE・AWS の資格に対応しています。ラボの問題は AI で作成し、検証したものです。試験の運営団体とは関係のない非公式の教材で、合格を保証するものではありません(自社サービスのご案内です)。
どの資格を取るか迷っている場合は、エンジニアに資格は意味ないのかで、資格が役立つ場面と役立たない場面を整理しています。
よくある質問
資格取得支援制度と資格手当の違いは何ですか?
不合格でも受験料は会社が負担してくれますか?
会社が負担した資格の費用は給与として課税されますか?
会社を辞めたら受験料を返さないといけませんか?
まとめ
- 資格取得支援制度は、受験料や講座代など、資格を取るまでの費用を会社が負担する制度。資格手当とは別
- 厚生労働省の調査では、正社員の自己啓発を支援する事業所は 81.4%。支援の中身は受講料などの金銭的援助(74.7%)がいちばん多い
- 職務に直接必要な資格を取らせるための研修会・講習会等の費用は、適正な額なら課税しなくてよいとされている(所得税基本通達36−29の2)。受験料が当たるかは通達に明記がないので、経理担当に確認する
- 退職時の返還ルールは、申し込む前に就業規則や誓約書で確かめる
- 制度がなければ、業務上の必要を説明して相談するか、教育訓練給付金の対象講座を調べる
出典
- 厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査の結果について」:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html
- 厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査 調査結果の概要」(PDF):https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001728125.pdf
- 国税庁「所得税基本通達 給与等に係る経済的利益」(36−29の2):https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
- 労働基準法(e-Gov法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 厚生労働省「教育訓練給付金」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
- AWS「AWS Certified CloudOps Engineer - Associate」:https://aws.amazon.com/jp/certification/certified-cloudops-engineer-associate/
(いずれも2026年10月13日に確認)
免責:本記事は、2026年10月13日時点で厚生労働省・国税庁・e-Gov 法令検索が公開している情報にもとづく一般的な情報提供です。制度や法令の解釈は改定されることがあります。資格取得支援制度の有無・内容は会社によって異なります。税金・労働契約に関する個別の判断は、勤務先の規程を確認のうえ、税務署・労働基準監督署・専門家にご相談ください。本記事は特定の成果を保証するものではありません。
